スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[--/--/-- --:--] | スポンサー広告 | page top
後日譚
というわけで、書いてみました。
『ザ・シェフ』の二次創作となります。
私のブログを今まで読んでみて、読んでみたいとお思いの方だけ、お読み下さい。

私の文章を苦手だと思う方。
パロディ、二次創作と呼ばれるものを受け付けない方。
は、ここまででお帰り下さい。先には進まないように。

読んだ後は、感想はいいですけど、批評はやめてね。
気が小さいので、立ち直れないかもしれないので。

あくまでも私の自己満足のための文章だということをご理解いただいたうえで、閲覧なさって下さい。
では。



2009年7月26日



重いドアを開け屋内に入っても、凍てつくような寒さは何も変わりがなかった。倉庫を改造したこの建物は、住むのに適しているとはとても言えないような代物で、ここの主がいかに自らの住環境に関心がないかを物語っている。
泉は、大股で部屋を横切って、ヒーターのリモコンを手に取った。運転のボタンを押すと、モーター音がして、ゆるい風が吹き出し口から流れてきた。がらんとしたこの空間を暖めるにはしばらくかかりそうだったが、それまで縮こまっている余裕はない。置きっぱなしにしておいた台車を取りに、ドアまで足早に戻った。



台車を部屋の中央まで運び、収納から大きな袋を出してきたとき、ドアを開ける音がした。
「泉さん、来てたんですか。」
太一が、白い息を吐いて入ってきた。ドア付近はやはり、外気温との差は全くないようだ。ドアが開いたときに吹き込んできた冷たい風に身をすくめ、そう泉は考えた。
「寒くなりましたね。凍えそうですよ。」
屈託ない太一に、泉も思わず笑みを返した。
「ホントね。まだ11月なのに、雪でも降るんじゃないかと思うわよ。」
荷物を調理台に置いた太一を手招きし、泉は台車に乗せたままの鉢に手をかけた。
「夏はうだりそうだし、冬は凍えるほどだし。こんなところに、よく住もうなんて考えたわね。」
2人で力を合わせて鉢を床におろすと、太一がはははと笑った。しかし、そこはあえてコメントせず、鉢から伸びる木を見上げた。
「去年のもよかったけど、これも立派ですね。」
まだ若いモミの木は、青々とした葉を誇らしげに茂らせていた。
「でしょ?これ探すの苦労したのよ。去年のがあんなになっちゃったから、今年はもっと強いのをって思って。」
太一は頷いた。去年泉が手に入れたモミの木は、クリスマス・イブの後しばらくしたら、枯れ落ちてしまったのだ。
「先生の生命の木だって言ってたからかなあ。先生があんなことになって、あっという間に元気がなくなって枯れちゃって。」
ツリーの飾りつけのための電飾やオーナメントを袋から出していた泉は、ふと目を上げてその頃のことをを思い出した。



イブの夜から数日後。泉と太一は、ようやくこの部屋にやってきた。
警察の検証も済んだ部屋は、やけに空虚でよそよそしかった。足元からせりあがってくるものは、寒さだったか、不安だったか。まるで悪い夢の中に彷徨いこんだかのように、あやふやな足場の上に立っている気がした。
大きな血だまりと、そこから数メートル身体を引きずった跡、その先はドアまで滴り落ちたような血と足跡が、固まって床に赤黒くこびりついていた。
ドアの外から道路までも血の跡は点々と続いていたという話だが、泉たちが訪ねる前に雨で流されてしまっていた。
あの光景を思い出すと、今でも体の芯が凍るような思いがする。



2人は無言でそれらの始末をした。
後悔と悔しさと怒りにこぼれそうになる涙をこらえ、ひたすらに懸命に手を動かし続けた。その時の床の冷たさと胸をつぶされそうな痛みは、いまだに2人を苛んでいる。



「泉さん、思い出してるんですか?」
声にはっとしてそちらを見ると、太一が優しい眼をしてこちらを見ていた。いつからこの青年は、こんなに優しい目をするようになったのだろう。あの事件のあと、何も考えられないくらいに慌しい日々が続き、気がついたら太一は少し変わってしまっていた。静かになったというか、落ち着きが出たというか。事件が彼に与えた衝撃は、彼を一度に数段大人にしたのだ。
「もう、終わったことですよ。」
「・・・わかってるわよ。わかってるけど。」
ため息をついて落とした肩を、太一は軽く叩いた。
「今は、コレやっちゃいましょう!」
それに、泉が答えようとしたときだった。



ドアから冷たい風が吹き込んできた。
靴音が床に響き、次いでかちりとドアが閉まった。
泉ははっとしてそちらに顔を向け、つられるように太一も同じところを見た。
男は、黒いコートを身につけていた。いつの間に降り出したのか、雪がその肩を白く染めていた。男は軽く肩を払い、部屋の中へ、泉たちのいるところへと近づいてきた。
「おかえりなさい、先生!」
太一が進み出て、革のアタッシュケースを受取った。それに頷いて、味沢は泉に眼を向けた。
「どうした。真冬に幽霊でも見たか。」
真顔で言われ、泉は返事に窮した。困惑する泉をじっと見つめてから、味沢は軽く笑った。
「冗談だ。」
やっぱりと、泉はむっとした。



最近の味沢は、こうして泉をからかっては楽しんでいる節がある。確かに、不機嫌な顔で「帰れ」と言われるよりはましだが、意地の悪い笑顔よりも以前見た写真のような、素直な笑った顔が見たいのにと、内心もやもやした思いを抱えることが多い。
「いっそ幽霊だったら、そんな憎まれ口を利くこともないでしょうけどね。」
「そりゃあ、あいにくだったな。」
動じることなく返されて、泉は言葉もなく味沢をにらみつけた。
しかし、味沢の関心は、もう次のものに移っていた。モミの木だ。まっすぐに伸びたモミの木を、黙ってじっと見上げる横顔に、泉はなぜだかひどく焦った。
「あの、あのね。去年のはダメになっちゃったでしょ。アレってやっぱり、味沢さんの身代わりになってくれたと思うの。だから・・・。」
「偶然だろう。太一、肉を冷蔵庫から出しておけ。」
「ちょっと聞いてんの?!」
必死になって説明しようとするのを容赦なく断ち切られ、あまつさえあっさり違う話題に一瞬で切り替えられてしまい、泉は思わず声を荒げた。
「人がせっかく心配してるっていうのに!。」
泉の激昂に、味沢が振り返った。
「なによ。頼んだ覚えはないって言うんでしょ。そのとおりよ。でも私は・・・!」
「いや。」
彼の口から出た言葉は、予想外のものだった。
「あんたがいてくれて、助かってる。」
一瞬、泉は思考も言葉も失った。そこへ、遠くから味沢の声が聞こえてくる。
「しかし、そんな話よりも、先にやらなきゃならないことがあるんじゃないのか。」
手に持った電飾を示され、泉は声を上げた。それからそっと味沢の顔を見上げた。
「なんだ。」
「なんだか、疲れてるみたい。」
「・・・あんたがそれを言うのか。」
ため息をつき、味沢はコートを脱いだ。
「12月になると仕事が立て込んで忙しいと言ったら、あんたがこの日がいいと言ったんだろう。」



去年のクリスマス・イブから大晦日まで、味沢は意識不明のままで過ごした。その後長い入院生活とリハビリを経て、ようやく今年の秋から仕事を再開したのだ。すると、それまでは絶えていた仕事の依頼も、味沢復帰の情報がどこからか流れたとたん、以前同様いや、以前にもまして舞い込むようになった。
病み上がりの身で、しかし手を抜くことなど一切しない味沢に疲労が蓄積されていっているのは、はたから見ていて明らかだった。
そこで、太一と相談して、クリスマスをいっしょに祝おうという話を持ち出したのだ。
しかし、12月のクリスマスシーズンにはディナー、そのあとの正月にはお節と、味沢の料理を求める者は後を絶たず、イブの1ヶ月前の今日、11月24日に、という話になったのだった。
その今日とて、味沢にとっては休日などではなく、今しも一仕事を終えて帰ってきたところである。疲れが見えるのも、道理。



返す言葉もなく、泉は黙って眼を伏せた。その頭上に、またしても大きなため息が降ってきた。
「別に、責めてるわけじゃない。」
顔を上げると、少し困ったような眼の味沢が見下ろしていた。
「とにかく、あんたはあんたのやるべきことをやるんだな。やらないなら、片付けてくれ。邪魔だ。」
それでも憎まれ口を叩くことは忘れずに、味沢は脱いだコートを手に階段を上っていった。



「かわいくないったら。」
ドアが閉まるのを待って小さな声でつぶやくと、太一が笑った。
「しょうがないよ。逆に神妙な先生なんて、見たくないし。」
「・・・それもそうか。」
泉も笑って肩から力を抜いた。
「ところで、料理は太一君が作ってくれるんでしょ。なんにしたの?」
電飾をようやく飾りはじめながら尋ねると、太一が、ああと言葉を濁した。
「それなんだけど。」
太一が言いかけた時、2階のドアが開き、服はそのままに、エプロンを身につけた味沢が降りてきた。



「なんで?!」
ぎょっとして泉は声を上げた。
「味沢さん、どうしてそんな格好してるのよ。今日は座ってるだけでいいって言ったのに。」
慌てて前に立とうとしたが、あっさりとかわされた。
「太一、オーブンを温めろ。」
「はい。」
「じゃあ、始めるぞ。」
全く自分を無視して進んでいく会話に、泉は声を荒げた。
「味沢さん!」
「太一ひとりでは、手に余る。」
振り返って、味沢が言った。
「だからって。そんなに疲れてるのに、帰ってきてまで働かなくっても。」
「あんた、俺に報酬を払ったのか。」
思いもしない問いに言葉を失っていると、味沢が重ねて言った。
「報酬が支払われていない以上、これは仕事ではない。だから、私は働かされてなどいない。余計な気を回す必要もない。」
無表情に言い放って、味沢はきびすを返した。その背中になおも言いつのろうとしたものの、泉は吸い込んだ息を声にすることはできなかった。
「・・・あれ?」
あまりにもそっけなくてついかっとなってしまったが、味沢の言葉をよく考えてみると、怒るべきような内容ではないような気がする。要するに、味沢は仕事ではなくて、自ら進んで自分たちに料理を作ってくれるというのだ。しかも、
『やりたくてやってるんだから、つべこべ言わずに食え』
とまで言っている(ちょっと言いすぎか?)。
自分の料理が食べたければ、依頼して報酬を払え、とつねづねあの鉄面皮で言われている身としては、信じられない展開だ。そっと太一を見ると、彼もこちらを見ていて眼が合った。そして、泉が味沢の意図を理解したのを見て取ったのか、にこりと笑った。
「なによ。男同士だけで、わかっちゃってたってわけ?」
置いてけぼりを食った気がして面白くなく、泉はツリーの電飾を取り上げると、乱暴にまきつけた。
「でも本当に、無理はしてほしくないんだけどね。」
わざと大きな声で言って様子を伺ってみたが、味沢は聞こえてもいないかのようだ。
「いいわよ。せいぜい、どんどん先に行っちゃえばいいんだわ。どうせ、地球は丸いんだし。」
ふーんだと小さく呟き、ポケットから星の飾りを取り出す。去年用意したものは、どさくさでどこかに行ってしまったので、新しく買ってきたものだ。
「どんどんどんどん歩いていけば、いつの間にか地球を1周して、私の後ろに来ちゃうんだから。そうしたら、今度はそっちが私のことを追いかける番なんだからね。」
背伸びして天辺につけると、銀色の星は部屋の照明を受けてきらめいた。それを見上げ、泉はふふふと笑った。
「味沢匠、覚えてらっしゃい。」



ツリーを見上げて不敵に笑う姿を味沢が見ていることなど、泉は気がついてはいなかった。が、味沢がそれでどうしたかというと、ただ不審げに少し眉をひそめただけですぐに手元に意識を集中してしまい、それきり泉を見ることすらなかったのだった。
泉の目論見が当たる日は、今のところ甚だ遠いところにあると言わざるを得ない。
そして、それを正しく認識しているのは、今のところ太一ただ一人だけなのであった。





おわり



--------------------------------------------------------------------------------


--------------------------------------------------------------------------------



思ったよりも、長くなってしまいました。
小説(と呼ぶにはあまりにも稚拙で気恥ずかしいけど、便宜上そう呼ばせていただきます)書いたの、久しぶりです。ドラマのパロディは初めて、本編と連動したものを書くのも、今までほとんどなかったと思います(我が事ながら、記憶が定かではない)。


できるだけ本編の続きとして違和感のないものをと、私なりに登場人物たちの言動にも気を配ったつもりです。それでいて、ほんの少し進展もあったという設定にしてみました。表現できているでしょうか。
読み返してみて、確かに未熟で稚拙だけれど私らしい文章になり、自分としては満足できるものになったと思います。自画自賛ですみません。


ちょっと大変だったけど、楽しかった。
でもやっぱり、パロディは難しいね。


それでは、よろしければまたお会いしましょう。
スポンサーサイト

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

[2009/05/19 21:49] | 二次創作 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
<<また見られないものかと、この後も待ってみるつもりです | ホーム | ヒガシのDVD(ビデオ)見ちゃいました  その7 『ザ・シェフ』 >>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL
http://okoyuki.blog99.fc2.com/tb.php/97-7fce1c0b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。