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書いてはみたけど、続かない 改め『目撃者』その14(最終回)
ついに、ついに最終回。
長かったです~。
沢山の拍手を、ありがとうございました。
おかげで、ここまで来ることができました。
ううう。感無量でございますです~。

この記事を読む前に、13回目をお読み下さい。
1回目から読み直してみたい方は、こちらか、『未分類』カテゴリーからどうぞ。




二次創作(仕事人2009)に付き、ご注意のほどお願いいたします。





 津田は、夜道を歩いていた。月は細くはあったが明るく、歩くには十分だった。片桐の屋敷に戻った後、短時間ながら相当な量の酒を飲んだ。酔った自覚はあるが、悪い酒ではない。自分の行く末の明るさを思うと、自然に口元が緩む。片桐の紹介で、結婚も決まった。今回の事で、まとまった金も手に入った。自分の邪魔をしようとした者たちは、始末した。
 思えば、初めて人を斬った時は、ひどい気分になったものだった。だが、今は逆に高揚しているくらいだ。無我夢中で女を切った時とは、違う。肉を斬り骨を断つ感触が、飛び散る血しぶきが、腕に体に残り忘れられない。思い出すだけで、とてつもない悦びを感じるのだ。あの時。脇坂と相対した時、彼から強い意志を感じた。あれが、殺気なのだろう。空気を震わせるような、気迫だった。それを自分は跳ね返し、相手を上回る殺気を放ち、勝った。人を斬ることで、自分は剣士として成長した。人とは違う高みに、到達したのだ。
 湧き上がる優越感に、押さえ切れない笑みをこぼした時だった。
 ちょうど差し掛かった辻に、人が現れた。ぎくりと足を止めた津田はしかし、月明かりに照らされた知った顔を見て、ほっと息を吐いた。
「・・・・・・渡辺さん。」
「今晩は、今お帰りですか。」
 頷いたが、なんだか自分がうまく笑えていない気がした。
「ずいぶん、ご機嫌ですね。」
 いつものように、同僚は暢気な声でしゃべっている。それなのに、自分は何故緊張しているのだろうか。そうだ、自分は今、緊張している。何故だ。毎日顔を合わせている、同じ職場で働く同僚ではないか。暢気な声で、口元には笑みを浮かべて、小五郎は一方的に話をする。
「ご結婚が決まったそうですね。」
「・・・・・・ええ、まあ。」
 声もうまく出ない。喉の奥に絡んだように、こもってしまう。
「しかし、残念ですね。」
 穏やかな笑みのままで、彼は言った。
「・・・・・・え?」
「その縁談は、破談になりますよ。」
 言われたことが理解できず、津田はまじまじと相手を見つめた。そして、ようやく気がついた。小五郎の目が、全く笑っていないことに。口元には、穏やかな笑みを浮かべている。それなのに、目は少しも笑っていないのだ。鋭い視線が、津田に向けられていた。
 それに気づいた途端、全身を針で刺されるかのような痛みに襲われ、津田は声を上げた。
「わ、渡辺さん?!」
 しかし、確認しても痛みを感じた部分には、何の傷もない。それでも、痛みは治まらない。一体どうしたことかと考えた津田は、突然悟った。これが、これこそが殺気なのだと。
 突き刺し、切り裂くような痛みに、津田は混乱した。何故、目の前の同僚が、自分が感じたこともないような殺気を放てるのか。何故、それが自分に向けられるのか。だが、そんなことを考えている余裕はない。早くこの攻撃を止めなければ、痛みにおかしくなってしまいそうだ。津田は、刀を抜いた。己の精一杯の気迫を相手に向けると、少し痛みが和らいだ気がする。しかし、前には出られない。痛みと共に、のしかかるような圧力に、津田は必死に対抗していた。
 小五郎は、まだ刀に手もかけていない。それなのに、彼が一歩前に出ただけで、見えない力が津田を押しつぶそうとする。痛みは体中から発し、切れた傷から血が滴っている錯覚すら覚える。全身に汗が流れ、そのくせ寒くて仕方がない。
 恐ろしいと思った。体ががくがくと震えて、止められない。涙が出ないのが不思議なくらいだ。今すぐにでも逃げ出したかったが、背中を見せた途端に斬られることは明らかだった。斬られたくなければ、斬らなければならない。逃げられなければ、前に踏み込むしかない。津田は、刀を握りなおした。
 そうだ、どんなに小五郎が恐ろしい気を放っていようとも、それが彼が強いことの証明にはならない。小五郎など、稽古では自分に一度も勝てたことがないではないか。気迫はともかく、腕は自分のほうが数段上のはずだ。切り結んでみれば、案外簡単に勝てるのではないか。不意に思い出した小五郎の普段の姿に勇気を得、津田は反撃に出ることを決めた。恐ろしいほどの圧力に耐え、持ちうる全ての気合をこめて、津田は、刀を振り上げた。


 その瞬間、小五郎の姿が消えた。
 相手を見失いうろたえる津田は、下方からの微かな空気の動きを感じた。身体は反応せず、目だけが動いた。その目に映ったのは、自分を見上げる双眸。昏い瞳に宿る光は、怒りか恨みか、それとも哀しみか。考える隙もなく、また何が起きたのかを理解する暇もなく、津田の思考はそこで停止した。視界が、揺らぎ、傾き、流れ、歪み、急速に遠ざかり、闇に覆われていく。
 ほどなく、時間は津田から永遠に去り、代わりに静寂だけがその身体を包みこんだ。



 翌日、あちらこちらで幾つもの亡骸が見つかったが、ただ一人の目撃者も、何の手がかりもなく、下手人は見つからずじまいだった。
 全てを見、知っているものは、ひとつきり。
 夜空に浮かぶ月だけが、全てを知っているのにそ知らぬ顔で、夜毎に冴えた光で人々を照らしている。










終わりました。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
あとがきというか、解説はまた改めて。


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PCからご覧の方。今回は、最終回限定のお礼文となります(オマケもあります)。
ここからは、これまでの物は見られません。
お礼文その1から10は、第4回から13回までの黒い拍手ボタンからご覧下さい。
携帯からご覧の方は、どこの黒い拍手ボタンからでも最終回用お礼文になります。


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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

[2009/09/21 11:32] | 二次創作 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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