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書いてはみたけど、続かない 改め『目撃者』その13
13回目だ~。ラス前です。
最終回も、今夜中にはアップします。
1回目から読み直したいという方は、こちら、もしくは未分類カテゴリーからどうぞ。



二次創作(仕事人2009)に付き、ご注意のほどお願いいたします。



 小五郎は、暗鬱たる思いで足元を見下ろした。
 小さな身体は、道端の草むらにうち捨てられていた。重なり合うようにもう一人。こちらが、鉄平だろう。そして、
「・・・・・・脇坂さん。」
 結婚するのだとはにかんだ姿が、よみがえった。
 なぜ、あの時一言でも相談してくれなかったのか。なぜ、もっと早くに気が付いてやれなかったのか。いや、そもそも、近江屋の調査の時に、怪しんでも良かったのだ。
 それ以外にも、おかしな所はあった。甚太の事件の時、津田は何故自分を連れて行ったのか。あの日、脇坂はいたはずだ。それなのに、わざわざ自分を探してまで、同行させた。せつの時に調べに当たった脇坂に、甚太を見せたくなかったのだ。脇坂は、きっと覚えている。甚太がせつの子供だということを知れば、二月前の件も、改めて調べようとするかもしれない。ゆえに、せつのことを知らない自分を連れて行ったのだ。
 おそらく、せつ殺しが津田の働いた初めての殺しだろう。せつが殺された翌日に休んだのは、罪の意識に耐えられなかったため。甚太が殺された時にも、その場にいたに違いない。だから、あれほどに遺体から目をそらそうとした。首を絞められて苦しむ姿を見ては、その死に顔は正視できなかっただろう。
 風が吹いて、木々の枝や葉が音を立てた。。煩いくらいのざわめきは、殺された者たちの恨みの声のように耳に響いた。小五郎は、足元にしゃがみ込んだ。手を伸ばし、しずのうすく開いたままの目を閉じて、汚れた頬を指でぬぐってやると、まだほんのり温かみが残っているその柔らかさに、胸が痛んだ。
 もう血の通わないその姿に目を向けながら、小五郎は立ち上がった。しばし見下ろした後、顔を上げて歩き出す。その目には、昏い決意が宿っていた。




「しかし、何の因果かねえ。親も子も、同じ相手に殺されるってなあ。」
 他人事のような匳の言いように、涼次がその頭をはたいた。
「うるせえよ、黙ってろ。」
 が、その目は匳を見てもいない。小五郎の手元の、赤い巾着をじっと見つめている。小五郎は、涼次から受け取った巾着を開いた。場所は三番筋。皆が見守る中取り出されたのは、小さな木切れ。
「割符か。」
 主水が、呻くように言った。
「なるほど、取り返そうと躍起になるはずだ。」
「じゃあ、仕事だな。」
 匳が、台上に置かれた甚太の巾着を眺めて言った。
「だが、奴らの一味の侍がその津田って奴だってのは、間違いねえんだろうな。人間違いは、ごめんだぜ。」
 涼次の言葉に、小五郎は奉行所の調書を放った。
「この調べの時に、下手人は大男だという事になったはずが、津田の出した調書ではただの男としか書かれていない。一番肝心なことを、書き忘れるはずがない。わざと、書かなかったんだ。」
 お菊が、一同を見渡した。
「的は、近江屋の主・徳兵衛、手代の辰吉。同心・津田正親、船手頭・片桐忠直。皆さん、よござんすね。」
 頼み料を手にし、五人はそれぞれ夜の闇の中へ紛れて行った。

 


「では、あれは取り戻すことができなかったのか。」
 片桐は、厳しく徳兵衛をねめつけた。
「は・・・それが、なにやら怪しげな仕掛けのある家でして。中に入ることもできませんでした。」
「怪しげな仕掛け・・・?」
 徳兵衛を訝しげに見て、片桐はしばし考えた。
「・・・仕方があるまい。明日早くにでも、わしの手のものをつけてやる。ついでに、その家の者も始末してくるがいい。」
「片桐様の配下の方々がご一緒なら、大変心強い。」
 あからさまにほっとした顔を見せ、徳兵衛は突き出される杯に酒を注いだ。その顔には作った笑みを張り付かせている。
「津田も、連れて行くがよい。」
 杯に口をつけ、片桐は言った。
「もはやあの者も、こちら側の人間に成り果てた。腕の立つ人間がいれば、なおさら仕事もしやすかろう。」
「津田殿なら、いい働きをしてくれることでしょう。」
 近江屋も頷いた。が、当の津田は、この場にはいない。
「津田殿は、もうお帰りに?」
「おぬしが来る少し前に帰って行った。仏頂面をしておったが、あの下には面白い顔を隠しておる。人を何人も斬って、味をしめたのやも知れぬ。この先きっと、何かと役に立ってくれるであろう。」
 片桐は上機嫌に、徳兵衛に徳利を差し出した。徳兵衛も、その酒を恭しく受けた。二人の男は、もはや問題は去ったものとして、安心しきっていた。彼らを脅かすものは去り、これからはまた、思う存分に金を稼げる。二人は、すっかり気が大きくなり、美酒に酔いしれた。





 別室で飲んでいた辰吉は、物音に気がついた。
 初めは、気のせいかと思った。しかし、微かながら、音は何度も繰り返される。その内に、無性に気になってきた。
「何なんだ。」
 立ち上がり障子を開け、外に面した廊下に出る。外はすっかり闇に包まれている。目を凝らしても何も見えず、代わりに澄ました耳に、また微かな音が聞こえた。どうやら生垣のあたりから聞こえてくるようだ。しかし、生垣から聞こえるような音ではない。
 辰吉はゆっくりと、廊下から足を地に下ろした。音はもう聞こえなくなっていたが、記憶を頼りに音がした辺りに手探りで進んでいく。男は自ら、濃い闇の中に、足を踏み入れて行った。




 酒も程よく進んだ頃、片桐と徳兵衛は、物音を聞いた。音は大きなものであったし、近い所でのように感じられ、徳兵衛は不安げに背後を振り返った。
「・・・・・・なんでしょう。」
 片桐も、不穏なものを感じているようだ。
「うむ。」
 徳兵衛は、確認するために席を立った。音がした方に向かってみると、辰吉に用意された部屋の前に着いた。
「辰吉?」
 しかし、そこで飲んでいるはずの辰吉はいない。厠かと思って振り返ると、すぐ後ろに男が一人立っていた。叫び声を上げようとした口をふさがれ、徳兵衛は驚きと恐怖のために目を見開いた。その自分とは逆に、冷たい表情のない双眸。それが、徳兵衛の見た最後のものだった。




 席を立って行ったまま戻らない徳兵衛が気になり、片桐も立ち上がった。座敷から広い縁に顔だけを出して覗いてみるが、誰の姿も見えない。何かが起きている。この屋敷内に誰かが入り込み、何かを為そうとしている。一体誰が、どうやって。片桐の頭の中には、疑念が渦巻いた。自分の考えに没頭するあまり、片桐は己の背後に降り立った影に、全く気づいてはいなかった。








次回で、最終回になります。
ラスト1回、お付き合いのほどお願いいたします。
最終回は、こちらから。






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PCからご覧の方、お礼文その10、更新です。
お礼文1~10は、第4回~この13回までの黒い拍手ボタンからご覧下さい。
最終回は、最終回限定のお礼文となります。

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携帯版お礼文は、現在その9とその10です。

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