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書いてはみたけど、続かない 改め『目撃者』その11
11回目になってしまいまいた。
この辺からは、怒濤の勢いで行きたいです。
拍手および拍手コメント、ありがとうございます。
今回含めて、あと4回です。
そろそろ謎解きです。

二次創作(仕事人2009)に付き、ご注意のほどお願いいたします。


1からご覧になりたい方は、こちらから。



 同心部屋に入りもしない内に、伝七が飛んできた。
「渡辺さん!どこ行っていたんですか?!探してたんですよ!」
「ああ、伝七さん。腹の具合は、良くなったんですか?」
「それがですね。あれ以来、いつ坂本様に呼び出されるかと思ったら、腹が痛くて痛くて。・・・って、そうじゃなくて。」
 やはりそうだったかと思いつつ、小五郎は素直に頷いた。
「はい。」
「例の、子供スリ。どこかで見たことあるなと、ずっと考えてたんですけど、思い出しました。」
 伝七は、興奮した様子で言った。
「二月ほど前に、女が殺されたんですけど、その女の子供たちですよ。母親の亡骸に、泣いてすがって。見てられませんでした。あの子達は、あのあと子供たちだけでスリを働くようになったんでしょうか。思えば、かわいそうなことです。」
「・・・・・・そうでしたか。」
 そういえば、調書の名前は、伝七になっていた。
「でも、あの時、子供は三人いたはずなんですけど。スリを働いた時には、二人しかしませんでしたね。あと一人、どこかに隠れていたんでしょうか。」
 小五郎は伝七を見た。
「三人?!」
 初耳だった。仕立て屋も、そんな話はしなかった。
「ええ。確か・・・鉄平という名だったと。」
 二人だと思っていた子供が、三人いた。その知らせは、小五郎の心をひどく騒がせた。
 涼次の所ならば安全だと思ってしずを預けたが、間違いだったかもしれない。あの家は、侵入者には厳しい一方、出て行く者には脅威にはならない。その気になれば、しずはやすやすと家から出ることができるのだ。もう身内はいないだろうからと安心していたが、兄弟がいるなら話が違う。鉄平ならば、しずを呼び出すことができる。家から一歩出たとたん、しずは全ての庇護を失ってしまうのだ。三人目の少年の存在は、ひどく危険なものであると言える。
「あの甚太って子供が、死んだんですね。娘のほうは、見つかったんですか?」
 休んでいた間にあったことを調べていたのだろう。伝七はいくつかの調書を、手にしていた。
「いや、まだ。」
「そうですか。無事なら、良いですけどねえ。」
 その時、小五郎の脳裏に、ある考えがひらめいた。他に、せつの子供が三人だと知っていたのは、誰なのだろう。
「伝七さん。母親が殺された時、誰と一緒に行ったんですか?」
「え?」
「あの日、私は休んでいました。代わりに誰と、取調べをしたんです。」
 調書を読んで、既にその時の事を思い返していたのだろう。伝七はあっさりと応えた。
「脇坂さんです。あの日は、津田さんもお休みを取っていて、それで二人で出かけていったんですよ。」
「・・・・・・脇坂さんが。」
 小五郎は、突然全てを理解した。
「そうか、そういうことか。」
「渡辺さん?」
 用があると言って去って行った脇坂の後姿が、思い出された。彼は、どこへ行ったのだろう。どんな用事を、済ませに行くのだろう。
「まさか。」
 自分が考えたとおりならば、止めなければならない。小五郎は、伝七の手から、甚太の事件の調書を取り上げた。
「借ります。」
「えっ、渡辺さん?ちょっと、どこ行くんですか!」
 伝七の声を背中に聞きながら、小五郎は駆け出した。急がなければならない。取り返しのつかなくなる前に、なんとしても。




 いつの間にか、眠っていたらしい。名を呼ばれた気がして、しずはふと目を覚ました。目をこすりながら見回したが、涼次はまだ戻っていないようだ。うまく、小五郎に会えただろうか。巾着は渡せただろうか。心配でたまらなくなり、ため息を一つついた。その時、また自分を呼ぶ声がした。どうやら、気のせいではなかったようだ。しかも、その声には覚えがある。
「しず。しず、いるのか?」
 慣れ親しんだ声だ。しずは、窓をそっと開けた。あの夜以来はぐれていた鉄平が、少し離れた所に立っていた。はぐれたと思っていたが、鉄平は近くにいて涼次に連れられて行くしずを見送っていたのだ。道は一本道。歩けば、自然にここにたどり着く。
「しず、出てこれるか?」
 鉄平は、尋ねた。
「この家、近づくのこええよ。そっちから、出てきてくれ。」
 しずは、迷った。涼次からは、絶対に出るなと言われている。しかし、相手は鉄平だ。鉄平が、自分に何かをするはずがない。しずは頷き、家から足を踏み出した。
「しず、無事か?」
 出て行くと、鉄平がしずの身体を、あちこち触って怪我がないか確かめた。しずが頷き、どこにも怪我がないことがわかると、ほっと息を吐いた。鉄平も、変わったところは無さそうだ。しずも、安心して微笑んだ。
「どうかしたのか?」
 しゃべらないしずを不審に思ったか、鉄平が顔を覗き込んできた。が、答えを待つことなく、鉄平は手を引っ張った。
「とにかく、一緒に来てくれ。」
 驚いて立ちすくむと、鉄平は言い聞かせるように肩を軽く叩いた。
「話をつけるんだよ。このまま逃げて隠れ続けるなんて、真っ平だからな。」
 しずは、首を振った。嫌な予感がした。
「大丈夫。俺がちゃんと守るから。だから、行こう。」
 引っ張られながら、しずは後ろを振り向いた。涼次の家が遠ざかっていく。家が小さくなるごとに、心の中の不安は逆に大きくなっていく気がして、寒くもないのに体の奥から震えが湧いてくるのを感じていた。




 坂道の途中、祠の前まで来て、鉄平は足を止めた。既に、相手は待っていた。
月明かりに照らされた姿が3つ。子供の自分から見ると、高く聳え立つように見える。震えているのはしずだと思っていたが、いつの間にか自分も細かく震えていた。いつもならば、こうして相手と向き合い交渉するのは、甚太の役目だった。自分は、後ろで控えていればよかった。しかし、甚太はもういない。今は、自分がしずを守らなければならないのだ。鉄平は、奥歯をかみ締め、震える声を張り上げた。
「取引だ!」
 真ん中に立つ徳兵衛が、薄く笑った。
「お前たちの欲しいものは、わかっている。それを渡す。だから、その代わり俺たちを助けると言え!」
「よかろう。」
 ほっと息を吐き、しずに振り返る。
「しず、あれを出してくれ。」
 手を出すが、しずはぽかんとしている。
「甚太が掏ったやつだよ。それを返せば、見逃してもらえる。」
 しずは、首を振った。手を広げて見せ、持っていないと示した。
「まさか。どこにやったんだ!」
 鉄平の剣幕におびえ、しずはただ首を振り続ける。
「そんな・・・・・・。」
 鉄平は、青くなった。材料がなければ、取引にならない。取引が成立しなければ、自分たちの生きる道はない。背中側から、砂を踏む音が近づいてきた。振り返ると、大きな影がゆっくりとこちらへ向かってくるのが見えた。
「どうした。早くその者に、渡すんだ。」
 せかされて、どうにかごまかそうと思ったが、何も言葉が出てこない。
「あの、その。それが・・・・・・。」
「まさか、私たちを騙したりなんか、してないだろうね?」
「いや、騙したわけじゃあ。」
 言葉は丁寧だが、こちらの態度に相手は苛立ち始めている。今更後悔しても遅いが、きちんと確認してから来るんだった。突発的な出来事に、鉄平はすっかり混乱してしまっていた。徳兵衛が、冷淡に言った。
「持ってないんじゃあ、もう用はないね。」
 感情のこもっていない声が、いっそ薄ら寒い。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」
 慌てて男に近づこうとしたが、目の前の大男がずいと踏み出してきて、逆に後ずさった。
「そ、そうだ。さっきまでいた家にあるんだ。ここ上がってったとこなんだよ。すぐそこだから、ちょっと行って取ってくるよ。」
 しずが袂を引くのにも気づかずに、調子よく言ってその場を離れようとしたが、許してはもらえなかった。大きな影が、何も言わずに二人の近くに進み出た。
「そこに行けば、あるんだな。」
 影の向こうから、徳兵衛が尋ねた。鉄平が無言で頷くと、そうかと言った。しかし、ほっとしかけた鉄平は、続く言葉に凍りついた。
「それだけ聞けば、十分だ。」
 もう用なしだと言われ、全身の血の気が引いた。目の前の男がまとっているのは、間違いなく殺気。
「う・・・わああっ!」
 足が勝手に動いた。逃げ出そうと駆け出したのだ。しかし、その目前にもう一つ影が進み出た。逃げ道をふさがれ、体がすくむ。影は、歩きながら刀を抜いた。月に照らされて、刀身が冷たい光を反射した。その腰に揺れる緋色の房に、鉄平は泣きそうになるのをひたすら耐えた。








小五郎が何を理解したのかは、次回で。
12回目は、こちらから。







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